Human Experience

公開日:2019.06.06

テクノロジーでオフィス利用率を「見える化」

効率的かつ生産性向上に寄与するワークプレイスをいかに作り出すか。その第一歩となるのがオフィスの利用率調査だ。これまで行われていた調査員の目視による調査では、正確なデータが取れない等の問題があったが、テクノロジーを駆使することで、より精緻な実態を浮き彫りにでき、課題解決につなげることが可能。グローバル企業のワークプレイス戦略に活用されている。

IoTセンサーで在席率を調査

「働き方改革」の機運が高まる中、ワークプレイス改革に乗り出す企業も増えつつある。しかし「本当に使い勝手がよく、生産性向上に寄与するワークプレイスを構築できているか」と問われると、はなはだ心許ない。例えば、昨今オフィス移転を検討する主な理由は「人員増による拡張移転」だが、移転後に必要な座席数はある程度予測はできても、ラウンジ等の共有スペースがどの程度利用されているのか、会議室の数は適正なのか等、利用実態を把握しなければ、その企業の実情に合わせたワークプレイスづくりは難しい。

では、実際にワークプレイス改革を進めるためには何が必要になるのか。その第一歩となるのがオフィス利用率調査(Utilization Survey)に他ならない。オフィス利用率調査とは、執務席やミーティングルーム、ラウンジ等にある各座席がどの程度利用されているのかを計測し、座席や会議室の数を含めて現状の執務環境がうまく機能しているかワークプレイスの課題を浮き彫りにするものだ。ただし、これまでは調査担当者がワークプレイスを定期的に巡回し、目視によって利用状況を把握していたが、時間帯によって利用状況に偏りが出ることがあり、必ずしも実態に即した調査結果になるとは限らなかった。

 

多くのグローバル企業が実施

しかし、現在のオフィス利用率調査はテクノロジーを駆使し、より精緻なデータを収集できるように進化を遂げている。各座席に人感センサーを設置し、着席時間を24時間計測できるようになっている。ワークプレイス全体の利用率をはじめ、各エリア単位の利用率、時間帯ごとのピーク利用率等、様々な切り口で利用状況を捕捉。web上にオフィスのレイアウトを表示し、各座席の利用率を色別に表示する等の「見える化」も可能だ。JLL日本 コーポレート営業本部長 佐藤 俊朗は「多くのグローバル企業がテクノロジーを活用したオフィス利用率調査を行い、ワークプレイス戦略に反映している」と指摘。その象徴的な存在が米国の大手コワーキング運営会社のWeWorkだという。施設内の利用者の動きをセンサーで計測し、内装レイアウトの効率化に生かしているそうだ。

この利用率調査を実施するとどのようなことがわかるのか。JLL日本の本社オフィスを例にしたい。フリーアドレス席やラウンジ、フォンブース、サイレントルーム等で構成されたABW型オフィスのすべての座席に人感センサーを設置し、利用状況を計測した。結果、フリーアドレス席で使用頻度が低い座席が一定量存在し、会議室やフォンブースの利用率が高いということが判明した。この結果を受けて、例えば利用頻度が低い一部のフリーアドレス席を減らし、会議室を1室多く設ける等、無駄な執務スペース(賃料コスト)を削減しながら、より働きやすい、生産性の高いワークプレイスへ改善することができる。さらにワークプレイス改革の変遷をトラッキングできるのも1つのメリットとなる。佐藤は「現在の東京Aグレードオフィス市場の空室率は1%と、空室が枯渇している状況。人を増やして生産性を高める考え方もあるが、増員分のオフィス床を確保することができない状況だ。そのため、現在入居しているオフィスを最大限有効活用し、生産性向上を実現するしかない。テクノロジーを使った利用率調査はその第一歩となる」との見解を示す。

 

「幸福度」の測定も視野

利用率調査の発展形としてウェアラブル端末で人が感じる「幸福度」を計測するIoTセンサーの導入も考えられる。これはJLLが提唱する概念「Future of Work(未来の働き方へ)」の中で最も重要な「ヒューマン・エクスペリエンス」を実現することに通じる。「ヒューマン・エクスペリエンス」は「人の体験」を大切に考えるワークプレイスを指す。「Well-being(身体的・精神的・社会的に良好な状態)」な執務環境に身を置くことで、従業員は自発的に生産性を高めていくことができる。IoTセンサーで従業員のストレス度合いを判断し、心的リスクがあれば事前にケアする。従業員のメンタルヘルスを守ることができる。ただ、「幸福度」は「感情」という最もプライベートな部分を調査することになるため、従業員に誤解を与えないように細心の注意を払う必要がある。

 

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