Human Experience

公開日:2019.03.26

現代のワークプレイスは内向的な人材に優しくない?

オフィスにフリーアドレスを採用する企業が増えつつあります。気軽に隣の人と会話ができ、コミュニケーションを深めることが容易で、多くの企業が採用し始めています。しかし、こうしたオフィスは外向的な性格の人材にとっては快適な環境といえそうですが、内向的な方にとっては性格上、受け入れにくいものです。企業で働く人材の中には内向的な人材も少なくないのですが、「オープンイノベーション」の御旗のもと、精神的な苦労を強いられている人材がいることも忘れてはならないようです。

オープンオフィスは内向的人材に不向き

現代のワークプレイスに求められる主な目標は生産性向上やイノベーション創発といえるでしょう。実現の鍵は従業員同士が連携し、より効率的に業務を遂行する組織体制の構築といえます。フリーアドレスやABW型のワークプレイスが現在の最新トレンドとなっているのは、前述した目的を遂行するのに高い効果を発揮しているからなのです。

しかし、よくよく考えてみると、コミュニケーションを促すこれらのワークプレイスにおいて、外向的な性格の人材はうまく立ち回れるのですが、従業員の中には内向的な性格の人材も少なくありません。米国の家具メーカー・Steelcaseの調査によると「内向的な人材は労働力の30%-50%を占めており、フリーアドレスやABW型ワークプレイスを用意しても、一部の従業員しかそのメリットを享受していない」と指摘されています。いわば、内向的な人材は現在の「オープン」なオフィスに満足しておらず、ストレスを抱えているのではないでしょうか。

内向的な人材は静かでプライベートな雰囲気の空間を好みます。前述の調査は米国のケースですが、日本にも当てはまるのではないでしょうか。柔軟かつ協調的な「オープンイノベーション」を前提とした働き方の潮流に急いで追いつこうとするため、企業は内向的な人材をないがしろにし、ワークプレイス改革を進めてきた事例は決して少なくありません。その結果「集団思考」文化が定着し、企業が製品やサービスを企画・開発する際、最も発言力がある人物の、必ずしも「正解」とはいえない意見が採用されることが多くなってしまいました。

 

バランスを取り戻す

そうした状況を背景に、先進国の1つ、オーストラリアではマネジメント層は協働する必要性と、個人で集中して作業する必要性についてバランスを取り始めています。例えば、オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学教育学部のオフィスは、進歩的な「コンビ・オフィス」モデルを採用しています。これは7.5㎡の小区画スペースを教員向けオフィス「フォーカスポッド」と専門スタッフと高い学位の研究生向けのオープン設計オフィスを組み合わせたものです。一方、オーストラリアの独立系法律事務所のコーズ・チャンバーズ・ウェストガースは苦心して、従業員がいつでも必要な時に「籠る」ことのできる個室空間を十分に用意しています。

これらの「コラボ・オフィス」は外向的人材と内向的人材が共存共栄し、組織が効率的な成長を遂げる上で絶妙な「バランス感覚」を発揮しているのです。内向的な人材にとって音響的・視覚的刺激が制御できる「閉じた空間」は必要不可欠で、これは在宅勤務を容認する「柔軟な組織体制」にも通じる点があります。

 

外向的な人材への過度の依存

少し古いですが、ビジネス書「内向型人間の時代:社会を変える静かな人の力」(講談社、2013年5月13日出版)では、外向的な人材に対する社会の偏重とプライベート空間の相対的な欠如により、内向的な人材が真の力を発揮することが難しくなっていることが指摘されています。そして、内向的な人材にとって居心地が良い空間とはするのは一人でいる時や刺激の少ない環境にいる時で、反対に外向的な人材が居心地が良いと感じるのは、多くのことが起こっているスペースにいる時と指摘しています。もし内向的な人材があまりにも騒々しい空間に行くと、余計な負荷がかかることになり、労働パフォーマンスにも悪影響を及ぼすことは想像に難くありません。

では、内向的な人材に適した空間とはどのようなものでしょうか。それは、知覚刺激を含む職場空間の様々な要素を制御し、完全なプライバシーを提供する場所…人の目につかず、他人も見えない場所を選択できる自由な空間といえるのではないでしょうか。そして、心を落ち着かせる木材や天然素材、戦略思考を促すツールとしての書棚、家庭的な家具、調光可能な照明、ストレッチングエリア、同僚と濃密な会話ができる個室スペースなどが必要になります。

 

内向的だけではない

一方、Steelcaseの調査によれば、米国の正社員の約30%は「本当に生産性を高めるためにはいつものオフィス・住居等から離れて仕事をする必要がある」と感じており、41%は内密の会話をするために、オフィス内にプライベートな場所が確保できないことを苦慮しているとの調査結果も出ています。

ワークプレイスを新たに整備する際、確かにコミュニケーションを深化させるオープンな場は重要でしょう。しかし、集中して業務に打ち込める空間も同様に不可欠なのです。多様な人材が集うダイバーシティな組織を実現するためにも「内向的な人材」のナイーブさにも目を配る必要があるようです。

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